令和元年度 夏休み科学部活動日誌【その4】
- 2019/08/02 11:33
さて,今日も予想最高気温38℃という猛暑日です。理科室の中で活動するとはいえ,風もあまり吹いておらず蒸し暑い状況では熱中症の危険性もあります。ということで,自分がやろうと思った実験が終わった生徒は先に帰るように伝えました。何事も健康第一です。
前回の最後に見せた「お酢に生卵を漬ける」実験のその後です。
火曜日の時に比べて,鶏卵の殻がだいぶなくなってきました。そろそろお酢の成分である酢酸が反応しきってしまっていないか心配ですが,もう少しがんばらせてみます。腐敗の心配もあるため,冷蔵庫で保管します。
ラムネを作ってみようということで,砂糖と重曹,クエン酸,氷蜜を混ぜていました。
…水分が多すぎる気がします。果たしてうまく固まるのでしょうか?
最後に界面活性剤のイオン的性質について調べたい生徒がいたので,いろいろと薬品を購入しました。まずは,下の写真にある物質です。クリスタルバイオレットという名ですが,固体はどう見ても紫ではありません。これを0.1mg取出し,500mLの水に混ぜるのですが,間違えて1000倍(0.1g)入れてしまいました。隣の写真が混ぜた後です。後で気づく失敗って結構ありますね。
これをつかって,ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)と塩化セチルピリジニウム(CPC)の性質を調べます。聞きなれない物質かもしれませんが,ラウリル硫酸ナトリウムはシャンプーなどの界面活性剤として,塩化セチルピリジニウムは液体研磨剤(水歯磨き)やうがい薬などに使われています。
左から,塩化セチルピリジニウム,ラウリル硫酸ナトリウム,水を試験管に入れたところです。そこにクリスタルバイオレットを加えると,見事な紫色になっています。この状態の試験管にそれぞれ水酸化ナトリウムを加えると…
塩化セチルピリジニウムを入れた試験管の色が一気に消えました。これだけでも「おおっ」という感じですが,この反応には続きがありました。
水だけを入れた右側の試験管も徐々に色が変わり,塩化セチルピリジニウムを入れた方は黄色になってきました。ちなみに,この水は水道水ではなく精製水を用いています。ということは,反応速度に水酸化ナトリウムと中の物質との関係性が考えられます。ラウリル硫酸ナトリウムを入れた方は,なんとなく薄くなっていますが,最後の1枚だけフラッシュをたいてしまったために色合いが変わっている可能性がありますので参考までに。
では,ラウリル硫酸ナトリウムと塩化セチルピリジニウムを混ぜてみましょう。
こうなりました。白色の沈澱が発生しています。この辺りの詳しいメカニズムは,国立大学56工学系学部HPにある,金沢工業大学の実験の説明が詳しいと思いますのでリンクを貼っておきます。おそらく,実験を探した本人もここを参考にしたのではないでしょうか。
https://www.mirai-kougaku.jp/laboratory/pages/181005.php
今回の実験で用いたラウリル硫酸ナトリウムですが,薬品の後処理としては「廃液処理」ということをします。簡単に説明すると「流しから流せない」物質のため,容器にためておいて業者に引き取ってもらいます。シャンプーにも使われているのになぜ?と思われるかもしれませんが,シャンプーに入っている量と,薬品として扱う量では大きな濃度の違いがあるからと思います。日本の高度経済成長期に起きた水質汚濁は,界面活性剤をそのまま河川に投棄した結果でもありますので,下水道が普及しているとはいえ安全に処理したいものです。